最強おもしろ漫画紹介ブログ

自信を持ってお薦めできる漫画しか紹介しません。週3回更新。

【週末イッキ読み推奨】『サムライうさぎ』福島鉄平先生の最新作は、「王道少年漫画のエッセンス」と「作者の性癖」とが奇跡的に融合した、世界にたったひとつだけの傑作! ヒラヒラの可愛い衣装を着て戦う少年たちの、邪道ではなく王道な意味で胸が熱くなる物語『ボクらは魔法少年』!

 

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福島鉄平『ボクらは魔法少年』(集英社)1巻より

魔法少女」の活躍を描いた物語は、古今東西さまざまな作品があります。では、少女ではなく「魔法少年」を描いた作品はどうでしょうか?

 

本日ご紹介する作品『ボクらは魔法少年』(集英社、5巻まで発売中)は、少年たちが「魔法少年」に変身し、ヒラヒラの可愛い衣装を着て戦う物語です。……と書くと、何だかギャグっぽい作品を想像されるかもしれませんが、その可愛い見た目からは予想もつかないような「王道少年漫画のストーリー」が展開していきます。ある意味では、今の少年ジャンプ本誌よりも”ジャンプらしい”漫画と言える本作について詳しく紹介していきます。

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【知られざる名作】小さな町の小さな映画館「かすみ座」を経営するのは、口は悪いが腕はいい映写技師”トーワ”と、記憶喪失なのに映画のことだけは異常に詳しい青年“もぎり”のワケありコンビ。『明日、シネマかすみ座で』は、過去に囚われた二人と名画座に集まる人々とを描いた人間ドラマの秀作です!

 

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本郷地下『明日、シネマかすみ座で』(KADOKAWA)1巻より

突然ですが、「名画座」が好きです。名画座とは、旧作映画を二本立て・三本立てといった形で、安価な値段で上映する映画館のこと。最近はあまり行けていませんが、学生時代にはよく行っていました。

 

やっぱり映画は家で観るよりも、スクリーンの大きさや音響設備に優れた映画館で観たいですし、「お昼すぎに入館して、映画を二本観終わって出てきたら日が暮れていた」というような贅沢な時間の使い方ができるのも個人的に好きなところです。

 

本日ご紹介する作品『明日、シネマかすみ座で』(全3巻、KADOKAWA)は、そんな名画座」を舞台に、あたたかい人間ドラマを描いた名作です。

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【今週のPowerPush】もうすぐ文化祭! 天文少年のカナメと、北海道から引っ越してきたばかりのアミを中心に、中学生たちのみずみずしい日常を”圧倒的な表現力”で描く! 大石まさる先生の最新作『うみそらかぜに花』は、1ページ1ページが幸福感に溢れる最高の漫画体験です!

 

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大石まさる『うみそらかぜに花』(少年画報社)1巻より

今さらですけど、「漫画」って凄いなあと思うのです(ほんと今さらですけど)。基本的に白と黒とグレーだけで構成されているシンプルなものなのに、そこに描かれている「キャラ」や「世界」は本当に実在しているような存在感を放っていますよね。もし『ペンや紙を使って誰かに「本当に実在しているような存在感」を感じさせてください』と言われても、筆者にはそんなこと到底できそうもありません。

 

本日ご紹介する作品、1月29日に第1巻が発売されたばかりの大石まさる先生の最新作『うみそらかぜに花』(少年画報社)は、まさにそんな「存在感」に満ち溢れた漫画です。ストーリーは比較的シンプルですが、1ページごとの表現力が凄まじく、そこに描かれた「登場人物たち」や「町」がみずみずしい輝きを放って……本当にそこにいるかのような存在感を持っているのです。

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【週末イッキ読み推奨】日本で、ドイツで、中国で……強大な組織によって故郷を蹂躙された三人の女が、法も倫理もない世界で血みどろの戦いを繰り広げる! 『無限の住人』の沙村広明先生が、『波よ聞いてくれ』と並行して描き続けているバイオレンス任侠活劇の傑作『ベアゲルター』!

 

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沙村広明『ベアゲルター』(講談社)1巻より

最近の漫画のトレンドを2つ挙げるとするならば、1つは「残酷」ではないかと思います。日本で一番売れている漫画雑誌「少年ジャンプ」でも、『鬼滅の刃』『呪術廻戦』『チェンソーマン』といったダークな作品がまるで残酷さを競い合っているかのような時がありましたし(そういえば『鬼滅の刃』第一話のサブタイトルは「残酷」でしたね)、他誌に目を向けても残酷な状況を創造することが今の漫画家には強く求められている気がします。

 

そしてもう1つは「説明しすぎないこと」のような気がします。ひとつの戦闘の中で、あるいは物語全体を通して「今何が起こっているのか」「この行動に何の意味があるのか」「この固有名詞は何を表しているのか」といったことをあえて説明しない、そうして読者に考えさせてから数ページ後、あるいは数週間後・数カ月後に真相を見せる……そんな、設定をあえて小出しにしていくような作品には独特の中毒性があります。

 

本日ご紹介する作品は2011年から連載されている長期連載作ですが、最近のトレンドである上記2つにぴったりと当てはまっている作品です。つまり時代がこの作品に追いついたといっても過言ではないと思います。今こそ読みたい沙村広明先生の傑作『ベアゲルター』(講談社、5巻まで発売中)を本日はご紹介していきます。

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【知られざる名作】”狩猟系YouTuber”として生計を立てている千秋は、性同一性障害の苦しみを抱えて生きていた……ある父子の葛藤と和解を描き「少年ジャンプ+」で大きな反響を呼んだ表題作と、その後日譚が収録された『遠田おと短編集 にくをはぐ』は、今この世界に必要な一冊

 

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『遠田おと短編集 にくをはぐ』(集英社)より

集英社の漫画アプリ「少年ジャンプ+」は、『SPY×FAMILY』や『怪獣8号』といった連載作品が人気を博す一方で、読切漫画の意欲作が多く掲載されているという特徴も持っています。編集長のインタビュー記事↓によれば、年間150作〜170作もの読切が掲載されているとのこと。(原稿料として年間4000万円以上のコストがかかっている計算になるので、それだけ読切漫画への熱意がある媒体ということだと思います)

alu.jp

 

omosiro-manga.hatenablog.com

当ブログでも、「2020年にジャンプ+に掲載された良作読切」のまとめ記事↑を掲載したことがありますので是非ご参照いただけたら嬉しいのですが、本日ご紹介する『遠田おと短編集 にくをはぐ』の表題作である読切「にくをはぐ」は、このまとめ記事の対象範囲の少し前、2019年12月に「少年ジャンプ+」に掲載された作品です。掲載時にネットで大反響を呼んだこの作品を含む、短編集全体について本日はご紹介していきます。

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【今週のPowerPush】罠にはめられ、ロンドン市長殺害事件の容疑者にされてしまった南アジア系の青年・アルは、冤罪事件に関わった過去を持つ刑事・エリスと共に真犯人を探し始めるが、さらなる陰謀が待ち受けており……『ロスト・ラッド・ロンドン』はまるで海外ドラマのような新感覚クライムサスペンス!

 

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シマ・シンヤ『ロスト・ラッド・ロンドン』(KADOKAWA)1巻より

NetflixAmazon Prime Videoのようなサブスクリプションの映像サービスのおかげで、気軽に海外ドラマを見ることができる世の中になりました。軽い気持ちで観始めて止められなくなってしまった経験、多くの方がしたことあるのではないでしょうか。日本とは異なる文化・習慣切れ味の鋭いセリフよく練られたストーリー…といった魅力が海外ドラマにはあると思います。

 

本日ご紹介する作品、1月12日に1巻・2巻が同時発売されたばかりの『ロスト・ラッド・ロンドン』(KADOKAWA)は、そんな「海外ドラマの魅力的な要素」を詰め込んだような漫画作品です。

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【週末イッキ読み推奨】もし「恋する気持ち」を視覚的に見ることができたら? そんな能力を持った主人公と、三人の可憐な女子大生が繰り広げる少し変わったラブストーリー『恋は光』……に登場する、漫画史上最高にかわいい負けヒロイン・”北代さん”が好きすぎて生きるのがつらい!

 

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秋★枝『恋は光』(集英社)1巻より

いつのまにか、「負けヒロイン」という言葉がすっかり世間に定着しつつあります。恋愛をテーマにした男性向け作品の中で、複数のヒロイン(ヒロインという言葉も今どき使わないかもしれませんが便宜上使わせてください…)が登場するときに、主人公との恋が成就しないヒロインのことを一般的には指すと思います。

 

「負けヒロイン」の類型にあてはまり、読者から「負けヒロイン」だと思われていたキャラクターでも最終的に主人公との恋が成就するパターンもありますので、これからこの記事で紹介する「負けヒロイン」の恋が実るかどうかは、本作を実際に読んで確かめていただきたいのですが……前置きが長くなりました。本日ご紹介する作品は、漫画史上最高にかわいい負けヒロイン(だと筆者は思っている)・北代さんが登場する名作ラブストーリー『恋は光』(集英社、全7巻)です。

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