【知られざる名作】”私にはえげつない秘密がある”……子供と大人、男性と女性、生者と死者という異なる二つの属性の間を揺蕩う四人の大学生が織りなす痛切な物語。『不器用な先輩。』『HGに恋するふたり』の工藤マコト先生の初単行本『木曜日は君と泣きたい。』には、二つの”驚き”が仕掛けられている!
工藤 マコト先生といえば、現在ヤングガンガンで『不器用な先輩。』、ガンダムエースで『HG(ハイグレード)に恋するふたり』を同時連載中の人気漫画家さんです。思わずため息が出るほど美しい絵が魅力的で、繊細な線で描かれる髪の毛のツヤ、瞳の輝きは何度見ても惚れ惚れします(『不器用な先輩。』は、電子版だと瞳に色がついているのも嬉しいですよね)。
そして工藤先生の作品のもうひとつの特徴は、ストーリー運びの巧みさ。短いページ数でも、的確にキャラクターの人柄と魅力を伝えることができる作家さんなのは間違いありません。
本日ご紹介する『木曜日は君と泣きたい。』(祥伝社、全3巻)は、そんな工藤先生の初単行本にして、その絶妙なストーリーテリングを味わうことができる作品なのです。
続きを読む【知られざる名作】『恋は雨上がりのように』や『九龍ジェネリックロマンス』では絶対に読むことができない、もうひとつの”眉月じゅんワールド”を体験してみませんか? 『さよならデイジー 眉月じゅん初期短編集』は、長編作品よりもテーマ性を重視した読みごたえ抜群の一冊です!
獲ってしまったのです。『九龍ジェネリックロマンス』が、このマンガがすごい!の3位を。『九龍ジェネリックロマンス』は大好きな作品で、YJに第1話が掲載された時から読んでいるので、近日中にこのブログで紹介しようと思っていたのですが……いま記事を書いたらこのマンガがすごいに便乗したと思われそうで何かシャクです!(自意識過剰)
というわけで、『九龍ジェネリックロマンス』の記事はしばらく保留にするとして(とはいえ、そのうち書くと思います。好きな作品なので…)、本日は『九龍ジェネリックロマンス』『恋は雨上がりのように』の作者・眉月じゅん先生の初期の作品を集めた短編集『さよならデイジー』をご紹介したいと思います。
『さよならデイジー』は非常に読みごたえがあって筆者は個人的に大変好きな一冊です。一方で、老若男女誰にでもお薦めできるタイプの本ではないというか、ちょっと「取り扱い注意」なところもあるので、そのことについても詳しく書いていきますね。
続きを読む【今週のPowerPush】新潟・燕三条の伝統工芸品「鎚起銅器」の若き職人・修にプロポーズされた女子大生・しいな。”職人の家に入る”って一体どんな感じ? 真面目でひたむきな青年と、ピュアな性格の金髪ギャルとの手さぐりな婚約生活を描く『クプルムの花嫁』は、最高にかわいい二人のハートフルストーリー!
本日ご紹介する『クプルムの花嫁』(KADOKAWA、1巻まで発売中)は、冒頭10ページ目ぐらいでいきなりプロポーズが描かれる作品です。「明らかに両想いなのになかなか付き合わない」ような恋愛漫画も世間には多くある中、そんなにハイペースで大丈夫なのでしょうか?
大丈夫なのです。なぜなら『クプルムの花嫁』は、「二人が知り合って、お互いに好意を抱くようになるまで」よりも「既に付き合っている二人が、新たな段階に進む」ことの素晴らしさを重点的に描いた作品だから。そして何より、主人公の二人がめちゃくちゃかわいいので「付き合うかどうか?」のハラハラ感なんてもはや不要なんですよね。そんな『クプルムの花嫁』をこの記事では詳しく紹介していきます。
続きを読む【週末イッキ読み推奨】あの”村上春樹”の最新作の装画を担当した漫画家・豊田徹也先生をご存知ですか? 2003年のデビュー以来、たった3冊の単行本しか出版されていないにもかかわらず、国内外の漫画好きから圧倒的な支持を受け続ける豊田徹也先生の静謐な世界をご紹介します
2020年6月、衝撃のニュースが報じられました。3年ぶりに刊行される村上 春樹の新作小説『一人称単数』の装画を、漫画家・豊田 徹也先生が担当するというのです。
豊田徹也が村上春樹の短編小説集の装画を担当「うれしいというより厳しい体験」(コメントあり) - コミックナタリー
豊田先生といえば、漫画好きから圧倒的な支持を受ける人気漫画家です。一方、2012年の短篇集『ゴーグル』以降単行本が出ておらず、また2016年以降は商業誌での活動もないことから、新作の発表が待ち望まれていました。
漫画好きにとっては”村上春樹の新作”以上の大ニュースだった、豊田徹也先生の復活。本日は豊田徹也先生が2003年のデビューから現在までに刊行した3冊の単行本をご紹介します。
続きを読む【知られざる名作】学生時代の小林秀雄が、若き天才詩人・中原中也と出会う! 後に日本近代史に名を残す二人の文学者と、魔性の女優・長谷川泰子との”三角関係”を描いた史実に基づく物語『最果てにサーカス』は、文学作品のフレーズがまるでミュージカルのように織り込まれる、詩情豊かな群像劇!
小林 秀雄(1902-1983)といえば、『私小説論』『考へるヒント』などの著作で知られる、日本の文芸評論を確立した人物。そして中原 中也(1907-1937)は、「月夜の浜辺」「汚れつちまつた悲しみに」などの詩で知られる、30歳の若さで亡くなった天才詩人です。
日本近代文学の巨人と言えるこの二人が、若い頃に知り合い、親しく交友していたことをご存知でしょうか。そして小林秀雄が中原中也の恋人を奪うという事件があったことを知っていますか?
本日ご紹介する『最果てにサーカス』(全3巻、小学館)は、小林秀雄と中原中也、そして魔性の女優・長谷川 泰子らの若き日を描いた、史実に基づく青春群像劇の傑作です。
続きを読む【今週のPowerPush】文学を愛する孤高の女子高生・スイは、ある特殊能力を持っていた。同級生からのいじめによって暴発寸前になるスイの能力。友人の天然少女・ショーコは不穏な暴力の予感を止められるのか……熊倉献先生の最新作『ブランクスペース』は誰も予想できない方向へ突き進んでいく
「『ジョジョの奇妙な冒険』の”スタンド能力”を何かひとつ貰えるとしたら、何が欲しい?」という、漫画好きの間では定番に近い質問がありますが、筆者はもし訊かれたら東方 仗助の”クレイジー・ダイヤモンド”と答えることにしています。壊れた物を直せるなんて最高の能力じゃないですか。
でも、仗助が戦った殺人鬼・吉良 吉影の”キラークイーン”に惹かれる気持ちも、正直かなりあります。嫌いな上司、失礼な店員、不愉快な知人……もしこっそり爆殺できる能力を持っていたなら、使わずにいられる自信はあまりありません。まして、もし10代の頃にそんな能力を持っていたとしたら、間違いなく道を踏み外してしまっていた気がします。
本日ご紹介する作品『ブランクスペース』(ヒーローズ、1巻まで発売中)も、ある特殊能力をめぐる物語です。その能力の持ち主は、文学作品を愛する孤独な女子高生。理不尽な”いじめ”に苦しめられる彼女は、能力を使って復讐するのでしょうか。それとも……
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