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【知られざる名作】”私にはえげつない秘密がある”……子供と大人、男性と女性、生者と死者という異なる二つの属性の間を揺蕩う四人の大学生が織りなす痛切な物語。『不器用な先輩。』『HGに恋するふたり』の工藤マコト先生の初単行本『木曜日は君と泣きたい。』には、二つの”驚き”が仕掛けられている!

 

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工藤マコト『木曜日は君と泣きたい。』(祥伝社)1巻より

工藤 マコト先生といえば、現在ヤングガンガンで『不器用な先輩。』、ガンダムエースで『HG(ハイグレード)に恋するふたり』を同時連載中の人気漫画家さんです。思わずため息が出るほど美しい絵が魅力的で、繊細な線で描かれる髪の毛のツヤ、瞳の輝きは何度見ても惚れ惚れします(『不器用な先輩。』は、電子版だと瞳に色がついているのも嬉しいですよね)。

 

そして工藤先生の作品のもうひとつの特徴は、ストーリー運びの巧みさ。短いページ数でも、的確にキャラクターの人柄と魅力を伝えることができる作家さんなのは間違いありません。

 

本日ご紹介する『木曜日は君と泣きたい。』(祥伝社、全3巻)は、そんな工藤先生の初単行本にして、その絶妙なストーリーテリングを味わうことができる作品なのです。

 

※『木曜日は君と泣きたい。』の第一話はこちら↓から読めます

木曜日は君と泣きたい。 - GANMA!(ガンマ)

 

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工藤マコト『木曜日は君と泣きたい。』(祥伝社)1巻より

『木曜日は君と泣きたい。』は、同じ大学に通う四人の男女の物語です。主人公の相川 薫は和服姿でキャンパスを闊歩する、少し変わった一年生。そんな薫のことを、同級生である幼馴染の男子・千三 涼はいつも気にかけています。

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工藤マコト『木曜日は君と泣きたい。』(祥伝社)1巻より

薫は、ファッションモデル・清水 零花の10年来のファンでした。零花が登場する雑誌を何冊も買い占める薫に涼は言います。「そないなもん見なくても あそこに本物おんねんやから」。

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工藤マコト『木曜日は君と泣きたい。』(祥伝社)1巻より

零花もまた、薫や涼と同じ「帝都大学」の学生だったのでした。長年のファンであるがゆえに、かえってなかなか零花に話しかけることができない薫。しかしある時、ひょんなことから零花と面識が生まれ、サインや握手をしてもらうことができました。

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工藤マコト『木曜日は君と泣きたい。』(祥伝社)1巻より

そんなある日、薫は零花が路上で女性とキスをしているところを目撃してしまいます。動揺する薫に対して零花は言います。「同情されるのが一番しんどいの」「きっと君みたいな子にはこの苦しみはわからない」。

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工藤マコト『木曜日は君と泣きたい。』(祥伝社)1巻より

また別の日、駅のホームでふらついてしまい、危うく線路に落ちそうになった薫は、同じ大学・学部に通う同学年の学生・早乙女 千秋に助けられます。助けられたものの、「自殺しそうになっていた」と勘違いされた薫は初対面の千秋に延々と説教され「なんなのこいつ」という感想を抱くのでした。

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工藤マコト『木曜日は君と泣きたい。』(祥伝社)1巻より

千秋が所属する柔道サークルに勧誘され、困惑する薫。一方、そんな二人の姿を零花が目撃していました。二人の間に面識があることを知った零花は、薫にあるお願い事を持ちかけます。「千秋君と私の仲を取りもってほしいの」と――。

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工藤マコト『木曜日は君と泣きたい。』(祥伝社)1巻より


 

 

……『木曜日は君と泣きたい。』を既に読まれている方が、もしこの記事を読んでいたら、今頃こう思っていると思います。「このあらすじ、肝心なことを書いてないやんけ!」と。

 

そうなのです。実は『木曜日は君と泣きたい。』には、ストーリーの根幹にかかわるある仕掛けが用意されており、コミックス第1巻の中で2回、「ええっ!?」と驚くような場面がやってくるのです。この記事を書くにあたって、その部分も含めてあらすじを紹介したほうがおもしろさが伝わるとは思ったのですが……この衝撃は、絶対に本編で味わったほうがいいやつだと思い、あえて記事にはしませんでした。

 

この第1話を読んでしまうと第2話以降も読みたくなるし、第1巻を読んでしまうと第2巻以降を読まずにはいられない……『木曜日は君と泣きたい。』はそんな漫画です。ラストはやや駆け足ではあるものの、彼らがどのような結末に辿り着いたかははっきり描かれています。全3巻、おすすめです。ネットで検索とかしないで、ネタバレを見ないで読むようにしてくださいね。