【週末イッキ読み推奨】もし「恋する気持ち」を視覚的に見ることができたら？ そんな能力を持った主人公と、三人の可憐な女子大生が繰り広げる少し変わったラブストーリー『恋は光』……に登場する、漫画史上最高にかわいい負けヒロイン・”北代さん”が好きすぎて生きるのがつらい！
いつのまにか、「負けヒロイン」という言葉がすっかり世間に定着しつつあります。恋愛をテーマにした男性向け作品の中で、複数のヒロイン（ヒロインという言葉も今どき使わないかもしれませんが便宜上使わせてください…）が登場するときに、主人公との恋が成就しないヒロインのことを一般的には指すと思います。
「負けヒロイン」の類型にあてはまり、読者から「負けヒロイン」だと思われていたキャラクターでも最終的に主人公との恋が成就するパターンもありますので、これからこの記事で紹介する「負けヒロイン」の恋が実るかどうかは、本作を実際に読んで確かめていただきたいのですが……前置きが長くなりました。本日ご紹介する作品は、漫画史上最高にかわいい負けヒロイン（だと筆者は思っている）・北代さんが登場する名作ラブストーリー『恋は光』（集英社、全7巻）です。
※『恋は光』の第一話はこちら↓から読めます
「恋をしている女は光る キラキラ キラキラ まるで宝石のように」……。そんな「恋の光」が、比喩ではなくなぜか「本当に」見えてしまう大学生・西条が本作の主人公。西条と小学校からの同級生である幼馴染・北代は、小説家志望の西条のことを「センセ」と呼んで、良い友達関係でいます。
ある日、混み合った大学の講義室で、偶然、西条と隣の席になった黒髪の乙女・東雲。本好きの西条は、隣の席の彼女が読んでいる本について何となく聞いてみます。その本があまり「好きではない」という東雲。「では なんのために読んでいるのですか？」と西条が聞くと、東雲はこう答えるのでした。
「恋というものを知りたくて」。
それが、西条が恋に落ちた瞬間でした。のちにわかることですが、とんでもない”不思議ちゃん”（良い意味で…）である東雲。そんな彼女が何気なく発した一言に撃ち抜かれてしまった西条は、北代に恋の相談を持ちかけます。
東雲は西条には釣り合わなさそうな美人。おまけに変わり者で携帯電話も持っていないと言います。そんな彼女とお近づきになるため、西条が考えた方法とは……
「交換日記をしませんか」という提案でした。
この突拍子もない申し出に対し、東雲の返答は……
まさかの「はい いたしましょう」というもの。
この西条・北代・東雲の三人に、「他人の彼氏を奪うのが趣味」というとんでもないヒロイン・宿木が加わり、少し変わった四人組による少し変わったラブストーリーが始まります。
「恋の光が見える」変わり者の大学生・西条と、そんな彼に負けず劣らず変わり者なヒロインたちとの独特なコミュニケーションを描いた『恋は光』。本作の最大の魅力は、何と言っても負けヒロイン・北代さんの素晴らしさに尽きます（断言）。
北代さんは、西条のことが好きです。それは北代さん自身がすでに自覚しています。しかし、「恋の光が見える」はずの西条の目には、なぜか北代さんは光っては見えないのです。
このことによって、「では西条が見ている光の正体は何なのか？ "恋の光"ではないのか？」「光が発動する条件は何かあるのか？」という謎が生まれ『恋は光』は一種のミステリ的な要素も帯びるのですが（この謎は最終7巻でだいたい解決します）、重要なのはそこではありません。問題は、北代さんが光らないせいで、（実はかなりヘビーな家庭環境で育ってきた）西条に幼少期から現在に至るまで寄り添い、孤独な西条の心の支えになってきた北代さんの恋心が全っっ然、西条に認識されないということなのです。
はっきり言いますが、こんなにもエゴを捨てて、ただひたすら主人公のことを想い続けたヒロインは、漫画の歴史上、一人もいなかったのではないかと思います。その健気さ、優しさを、筆者はうまく文章で説明することができません。表情のひとつひとつ、台詞のひとつひとつに北代さんの素晴らしさが滲み出ているのでどうか、どうか『恋は光』を読んで確かめていただきたいのです。
『恋は光』は、大学生の小さなコミュニティの中で男女が付き合ったり別れたり付き合わなかったりする作品です。であれば当然、話が進むにつれてかなりドロドロしてきそうなものですが、それが全くドロドロしない漫画なのです。それは北代さんをはじめ、登場人物が皆、自分以上に相手のことを大事にする漫画だからかな、と思います。現実世界では……とりわけ恋愛絡みでは、普通はこんなふうに振る舞えないものですが、『恋は光』は本当に優しい世界であり……その世界を象徴するようなキャラクターが北代さんなのです。
色々と書いてきましたが、正直この作品の魅力を、そして北代さんの魅力を言葉で伝えるのはかなり難しいです。これを言ってしまったら漫画紹介ブログとして負けな気がしますが「読めば絶対わかります」！ 1巻につき1回は絶対に「うわあああああ！北代さん！好きだああああああ！」と叫びたくなるシーンがありますので、是非とも読んで北代さんの魅力に悶え苦しんで欲しい……そんな青春恋愛漫画の大名作です。
