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【週末イッキ読み推奨】『サムライうさぎ』福島鉄平先生の最新作は、「王道少年漫画のエッセンス」と「作者の性癖」とが奇跡的に融合した、世界にたったひとつだけの傑作! ヒラヒラの可愛い衣装を着て戦う少年たちの、邪道ではなく王道な意味で胸が熱くなる物語『ボクらは魔法少年』!

 

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福島鉄平『ボクらは魔法少年』(集英社)1巻より

魔法少女」の活躍を描いた物語は、古今東西さまざまな作品があります。では、少女ではなく「魔法少年」を描いた作品はどうでしょうか?

 

本日ご紹介する作品『ボクらは魔法少年』(集英社、5巻まで発売中)は、少年たちが「魔法少年」に変身し、ヒラヒラの可愛い衣装を着て戦う物語です。……と書くと、何だかギャグっぽい作品を想像されるかもしれませんが、その可愛い見た目からは予想もつかないような「王道少年漫画のストーリー」が展開していきます。ある意味では、今の少年ジャンプ本誌よりも”ジャンプらしい”漫画と言える本作について詳しく紹介していきます。

 

 

※『ボクらは魔法少年』の第1話はこちら↓から読むことができます。

tonarinoyj.jp

 

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福島鉄平『ボクらは魔法少年』(集英社)1巻より

関東のどこかにある、何だか妙に治安が悪い街「闇雲市」。そこに暮らす11歳の少年・小田桐 カイトは、3度のメシより「カッコいいこと」が大好きな、やんちゃで元気なガキ大将です。

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福島鉄平『ボクらは魔法少年』(集英社)1巻より

そんなカイトに突然接近してくる少年・海原 マコト。3日前に転校してきたばかりのマコトは、「お願いがあるんだ キミにしか頼めないこと」と言って、人気のない場所にカイトを連れて行きます。そこでマコトは、不思議な力を使ってみせるのでした。

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福島鉄平『ボクらは魔法少年』(集英社)1巻より

「…ボクは”魔法の国”からこの不思議な力を託されて 普段から街の平和を守る仕事をしてるんだ」そんなセリフも、実際に不思議な力を見せられた後では信じるしかありません。仲間を探しているというマコトは、「オダギリくん 街の平和を守る正義の味方になってみない?」とカイトを勧誘してきます。カッコいいことが大好きなカイトが一も二もなく了承し、変身用のブレスレットのスイッチを入れると……

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福島鉄平『ボクらは魔法少年』(集英社)1巻より

次の瞬間、カイトは変身していました。フリフリの衣装を身にまとった「魔法少年」に

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福島鉄平『ボクらは魔法少年』(集英社)1巻より

実はこの世界は、「魔法少年」と呼ばれる”魔法世界からの使者”が公然と人助けをしている世界だったのです。それを知らずに変身用のブレスレット(一度着けたらなかなか外れない仕組みになっています)を装着してしまったマコトは、今日から『魔法少年ときめき♡ピンク』として街の平和を守ることになってしまいました。

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福島鉄平『ボクらは魔法少年』(集英社)1巻より

なかなか道路を横断できないおばあちゃんを助けてあげるなど、『ときめき♡ピンク』の姿で善行を積んでいくカイト。しかし、チンピラに絡まれていた人を助けようとしますが、マコトのような不思議な力を使うことができず返り討ちにあってしまいます。

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福島鉄平『ボクらは魔法少年』(集英社)1巻より

それもそのはず。魔法少年たちが着ているスーツ、その名も『オトメチック』は、魔法少年としての自信や誇りを持てない者には充分な力を貸してくれないのです。自分の姿に誇りを持てず、辞められるようになったらすぐ辞めるつもりでいるカイトが、なかなか強くなれないのは当然のことでした。しかし、そんなカイトに、あるとき重大な転機が訪れます……

 

 

 

『ボクらは魔法少年』は、一見するとギャグ漫画……あるいはちょっといかがわしい漫画に見えるかもしれません。しかし第一話を読めばわかるように、(衣装こそフリフリなものの)これは王道少年漫画なのです。悪魔の力を身につけた正義のヒーローが戦う漫画のように……あるいは呪霊の力を取り込んだヒーローが戦う漫画のように……「強き力を手にした主人公の少年が、戦いの中で成長していく物語」であることは、冗談抜きで間違いありません。……ただちょっと、衣装やアイテムが可愛すぎるだけなのです。

 

第一話では、登場する魔法少年はカイトとマコトの二人だけですが、話が進んでいくにつれて他にもさまざまな魔法少年たちが登場してきます。最初は敵として現れたキャラが改心して徐々に味方になっていく様は、まさに王道ジャンプ漫画そのもの。オトメチックに対する"ケモノチック"の闇、"結晶八傑(クリスタルエイト)"を目指す戦いなど、かつて少年ジャンプでワクワクした人の心を満たしてくれる要素に溢れた作品でもあります。

 

そして各回の「始まり方」や「ヒキ」、台詞とモノローグの使い分け、見やすく工夫されたレイアウト、読者を混乱させないよう簡潔に要点を伝える台詞回しなど、作者の福島鉄平先生がジャンプで培ってきた技術が遺憾なく発揮されている作品でもあります。こんなにも読みやすいネームが切れる漫画家さんはそういないと筆者は思います。

 

最初は単なる人助けとして始まった物語も、登場人物が増えていき徐々にテーマが見えてきました。最新5巻で「トキメキア(※魔法世界における国の名前です)って、もしかして○○○の暗喩だったの!?」と筆者は思ったのですが、もしそうだとしたら何て大胆不敵な作品なのでしょうか。だって明らかにあのウサギたちは○○○ですよね!? さすがにかなりのネタバレになるのでここには書けませんが、すごく衝撃的な展開でした。

 

福島鉄平先生の代表作は、少年ジャンプで連載された“武士の夫婦”が主役の異色作『サムライうさぎ』(全8巻)。そして、その後の短編集や短期連載で少しずつ垣間見せてきた「可愛い少年が描きたい」「可愛い少年が”曇っている”姿も描きたい」といういわば”性癖”を、本作『ボクらは魔法少年』でアクセル全開にしている印象です。

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福島鉄平『ボクらは魔法少年』(集英社)1巻より

「王道少年漫画のエッセンス」と「作者の性癖」が奇跡的なバランスで悪魔合体した作品、それが『ボクらは魔法少年』だと言えると思います。最近のジャンプ本誌ではあまり見られないような、胸が熱くなるような王道少年漫画が読みたい方には是非ともお薦めしたい作品です。あと、可愛い少年が”曇っている”姿が見たい方にも……。

ボクらは魔法少年 3 (ヤングジャンプコミックス)

ボクらは魔法少年 3 (ヤングジャンプコミックス)

  • 作者:福島 鉄平
  • 発売日: 2019/09/19
  • メディア: コミック
 
ボクらは魔法少年 4 (ヤングジャンプコミックス)

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  • 作者:福島 鉄平
  • 発売日: 2020/03/19
  • メディア: コミック
 
ボクらは魔法少年 5 (ヤングジャンプコミックス)

ボクらは魔法少年 5 (ヤングジャンプコミックス)

  • 作者:福島 鉄平
  • 発売日: 2020/10/16
  • メディア: コミック