最強おもしろ漫画紹介ブログ

自信を持ってお薦めできる漫画しか紹介しません。週3回更新。

【週末イッキ読み推奨】日本で、ドイツで、中国で……強大な組織によって故郷を蹂躙された三人の女が、法も倫理もない世界で血みどろの戦いを繰り広げる! 『無限の住人』の沙村広明先生が、『波よ聞いてくれ』と並行して描き続けているバイオレンス任侠活劇の傑作『ベアゲルター』!

 

f:id:omosiro_manga:20210219201244p:plain

沙村広明『ベアゲルター』(講談社)1巻より

最近の漫画のトレンドを2つ挙げるとするならば、1つは「残酷」ではないかと思います。日本で一番売れている漫画雑誌「少年ジャンプ」でも、『鬼滅の刃』『呪術廻戦』『チェンソーマン』といったダークな作品がまるで残酷さを競い合っているかのような時がありましたし(そういえば『鬼滅の刃』第一話のサブタイトルは「残酷」でしたね)、他誌に目を向けても残酷な状況を創造することが今の漫画家には強く求められている気がします。

 

そしてもう1つは「説明しすぎないこと」のような気がします。ひとつの戦闘の中で、あるいは物語全体を通して「今何が起こっているのか」「この行動に何の意味があるのか」「この固有名詞は何を表しているのか」といったことをあえて説明しない、そうして読者に考えさせてから数ページ後、あるいは数週間後・数カ月後に真相を見せる……そんな、設定をあえて小出しにしていくような作品には独特の中毒性があります。

 

本日ご紹介する作品は2011年から連載されている長期連載作ですが、最近のトレンドである上記2つにぴったりと当てはまっている作品です。つまり時代がこの作品に追いついたといっても過言ではないと思います。今こそ読みたい沙村広明先生の傑作『ベアゲルター』(講談社、5巻まで発売中)を本日はご紹介していきます。

 

 

※『ベアゲルター』の第一話はこちら↓から読むことができます。(暴力的・性的に過激な描写が含まれています)

comic-days.com

 

 

f:id:omosiro_manga:20210219201520p:plain

沙村広明『ベアゲルター』(講談社)1巻より

字 忍は、知り合ったチンピラの男・杉戸 朗から「二千万円ある」「俺を信じてついてきてくれ」と持ちかけられます。どう見てもまともなカネではないとわかっていながら、忍は朗の手を取ってしまうのでした。

f:id:omosiro_manga:20210219201606p:plain

沙村広明『ベアゲルター』(講談社)1巻より

しかし、朗が籍を置いていた暴力団「懸巣会」にあっけなく見つかり、捕まってしまう二人。忍は懸巣会の若頭・から尋問を受けます。

f:id:omosiro_manga:20210219201717p:plain

沙村広明『ベアゲルター』(講談社)1巻より

東との会話の中でわかったのは、懸巣会はある「条件」に適う対象を探していたということ。そして朗は、元々はその調達役として忍に接近したということでした。その「条件」とは、東の言葉を借りれば「若く健康で そこそこの器量があり 職にあぶれ金に困っている そして ある島の出身の女」というもの。

f:id:omosiro_manga:20210219201840p:plain

沙村広明『ベアゲルター』(講談社)1巻より

忍は「明日から懸巣組と共に行動しろ」と命じられます。忍の故郷・島根県の沖合に浮かぶ「石婚島」で行われる、あるヤクザとある企業との取引……それを強奪しようと東は考えているのでした。

f:id:omosiro_manga:20210219201936p:plain

沙村広明『ベアゲルター』(講談社)1巻より

石婚島で行われようとしているのは、ある暴力団と製薬会社との取引。懸巣組の構成員は8割方、顔が割れているため、相手に知られていない4人のメンバーが選抜されます。その中には忍の名前も……

 

忍にとって石婚島は、10年前に捨てた故郷。10年ぶりに戻ってみると、何の変哲もない漁村のはずだった石婚島は異様な変貌を遂げていました。その背後には、ドイツの「キービッツェンベルク」、中国の「画眉区」、そして日本の「石婚島」で同時に進められている、ある巨大な陰謀の存在があったのです。

f:id:omosiro_manga:20210219202143p:plain

沙村広明『ベアゲルター』(講談社)1巻より

石婚島で始まったヤクザと製薬会社の取引。そこに隻眼隻腕のドイツ人狙撃手ナミ・サブラソワが現れ、異常な強さで彼らを襲撃します。急襲されたヤクザの側の招集に応じ、ヘリで現れたのは中国人の睫毛(ジェマオ)。彼女もまた、尋常ならざる強さを持った暗殺請負人でした。

f:id:omosiro_manga:20210219202217p:plain

沙村広明『ベアゲルター』(講談社)1巻より

石婚島出身の忍、キービッツェンベルク出身のナミ、画眉区出身の睫毛。強大な組織によって故郷の姿を大きく変えられてしまった三人のヒロインを中心に、裏社会で生きる者たちの、許容もなく慈悲もない血みどろの戦いが今まさに始まろうとしているのでした。

 

 

 

『ベアゲルター』の最大の魅力は、なんといってもカッコいいアクションシーンカポエイラやシステマといった体術、そして様々な特殊武器を使った攻防が沙村広明先生の物凄い画力で描かれるので、とにかく派手で血湧き肉躍ります。

 

そして容赦のない残酷さについて触れなければなりません。この漫画に登場するのは、ことごとく裏社会で生きる人々。彼らの争いが生ぬるいもので終わるわけがありません。本土から船で5時間かかる孤島で……あるいは本土の暴力団事務所で……目を覆いたくなるような残虐なシーンが連続していきます。

 

彼らが戦わなければいけない原因は、国を越えて行われているある巨大な陰謀の中にあります。そのストーリーの全体像が見えるようになるまでの謎が謎を呼ぶ展開、そして登場人物同士の駆け引きのひとつひとつの中に込められている魅力的なギミック……いつまでも読み続けていたくなるような刺激的な面白さです。

 

良い子には絶対読ませられない大人のバイオレンス任侠活劇『ベアゲルター』、1巻を最後まで読んでしまった人はもう最新5巻までノンストップで読まずにはいられないと思います。過激な描写が苦手な方には絶対薦めませんが、そうでない方は是非とも読んでいただきたい作品です。

ベアゲルター(1) (シリウスコミックス)

ベアゲルター(1) (シリウスコミックス)

 
ベアゲルター(2) (シリウスコミックス)

ベアゲルター(2) (シリウスコミックス)

 
ベアゲルター(3) (シリウスコミックス)

ベアゲルター(3) (シリウスコミックス)

 
ベアゲルター(4) (シリウスコミックス)

ベアゲルター(4) (シリウスコミックス)

 
ベアゲルター(5) (シリウスコミックス)

ベアゲルター(5) (シリウスコミックス)