【今週のPowerPush】「もぉこうなったら三人で付き合っちゃお!!」漫画制作に取り組む男女三人の間で成立した、「男×女」&「男×男」のパーフェクトなダブルカップル! 『絶対ハッピーエンドになる三角関係』は、登場人物全員が可愛い、幸せ成分100%なハイテンションラブコメディです
何となくですが、ヤングジャンプの恋愛漫画は「恋愛漫画の概念を覆す恋愛漫画」が多いような気がしています。「えっ……恋愛漫画ってこういうのだったっけ??」と戸惑いつつも、面白いのでグイグイ読まされてしまう、みたいな漫画がいくつも載ってますよね。
本日ご紹介する作品も、そんな「概念を覆す系恋愛漫画」です。ヤングジャンプ本誌ではなく、webサイト「となりのヤングジャンプ」で連載されている作品ですが、またしてもとんでもない作品が登場しました。3月18日に第1巻が発売されたばかり、その名も『絶対ハッピーエンドになる三角関係』です。
『絶対ハッピーエンドになる三角関係』は、作者・梅田ぴよ先生のTwitter↓で第一話を試し読みすることができるのですが、率直に言って最初の4ページだけで超面白い漫画であることがわかると思います。
梅田ぴよ@3/18①巻発売 on Twitter: "三角関係なのに絶対ハッピーエンドになる話 (1/16)… "
- 漫画家やアシスタントが登場する漫画らしい
- 主人公(男)とヒロインが恋仲らしい
- 主人公(男)とイケメンも恋仲らしい
- ヒロインとイケメンの関係も良好らしい
ということがすんなりと頭に入ってきますよね。もう正直これだけで充分魅力的な紹介になっていると思いますし、今すぐ書店に走って第1巻を買って読んでほしいのですが、一応より詳しいあらすじを説明しますと、本作の主人公は上田 知輝くん。物語は、彼がまだ漫画家としてプロデビューする前の時点からスタートします。
日本一売れている少女漫画雑誌「週刊少女マーブル」。上田くんは、この雑誌の新人賞に投稿し続けるものの、26回連続で落選していました。そんな上田くんに担当編集者が勧めたのは、プロ作家のアシスタントになり、商業漫画の何たるかを勉強すること。上田くんは、「マーブル」の看板作家・宇佐美 みみ先生の下で働くことになります。
宇佐美先生の仕事場に着くと、そこで待っていたのは上田くんの理想のヒロインに激似な少女。彼女は宇佐美先生の娘であり、チーフアシスタントでもある宇佐美 うさでした。
さらに、仕事場にはもう一人のアシスタント・如月 熊がいました。高身長イケメンな彼に対して上田くんは謎の対抗心を燃やしますが、彼の目からは上田くんはこう見えていました。
「人が恋におちる瞬間をはじめてみてしまった まいったな」と言いたくなるようなこの雰囲気。腐女子であるうさは、上田くんのあだ名を「ねこちゃん」とし(※受けなので)、うさ・くま・ねこの3人でアシスタント業務に取り組み始めるのでした。
腐女子であり、同時に乙女でもあるうさは、次第に上田くんに惹かれていきます。そして上田くんに一目惚れしていた熊もまた、上田くんに告白するのでした。そして、1巻の中でまぁちょっといろいろあるのですが、最終的に「もぉこうなったら三人で付き合っちゃお!!」というコペルニクス的転回にたどり着くのです。
少女漫画とBL漫画が悪魔合体したような本作ですが、主要登場人物の三人が全員いい人なので、ストレスゼロで楽しめるところが最大の魅力であるような気がします。本作ではここから「三角関係」という概念を根底から覆すような明るく前向きな三角関係が描かれていくのですが、この子たちならあるいは本当にそれを実現できるのではないか、と思わせてくれるような素敵な三人です。
また、何気に「漫画家志望者の上達ストーリー」としても読めるところも面白いです。例えば背景担当の熊が背景を下描きし、チーフアシのうさがモブを加筆、そのあとで熊が背景にペン入れをし、最後に「ねこちゃん」こと上田くんがトーン仕上げをする……というくだり。単なる恋愛漫画であればここまで詳しく描写する必要はないかもしれないシーンですが、こういう「彼らの日常」がしっかり描かれていることでキャラへの親しみがどんどん湧いていきます。
さらに、自分の投稿作のために背景を練習している上田くんが、熊に指導を仰ぐシーン。上田くんが描く背景はどこがダメで、どういう技法を取り入れ、どういう練習をするべきか、ということが何ページにもわたって詳しく描かれます。もしかして「新人漫画家を育成する漫画」という裏テーマがあるのかな? と思うぐらい、”漫画を描く描写”が丁寧な作品でもあります。
上田くんは、担当編集者から「キャラクターは魅力的だけど話がつまらない」と言われてきていました。そんな上田くんが、自分たち三人をモデルにしたような「絶対ハッピーエンドになる三角関係の漫画」を描きはじめることで、徐々に作品制作が軌道に乗っていきます。冒頭の4ページで、将来的に連載を持つことになり、アニメ化も決定することが示唆されている上田くん。彼がそこまで成長していく過程も本作の見どころだと思います。
そしてもちろん、この三人の三角関係の行方もとても気になります。筆者は個人的にはBL漫画は守備範囲外で、ほとんど読んだことがないのですが、本作は怖いくらいスルスルと受け入れてしまいました。BLシーンも「この三人なのだから当然こうなるよね」という気持ちで読めてしまう、かなりの引力を持った作品です。いや本当に、とんでもない漫画が登場しました…!!