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【週末イッキ読み推奨】母親が再婚したため、新しい父の連れ子と同居することになった司。その義姉・ましろはとても美人で、親切で、そして……異常なぐらい綺麗好きだったのです! ラブコメ漫画でありながら掃除のテクニックに超詳しくなれる『汚物は消毒です』は大掃除の前に読んでおきたい一冊!

 

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田口ケンジ『汚物は消毒です』(小学館)1巻より

俄かには信じられないのですが、なんと来週にはもう12月が始まるようです。いや、マジですか…?? もう12月…??

師走になると、避けては通れない問題が発生します。そう、大掃除です。どうせ掃除をするなら、なるべく効率的なやり方で最大限に綺麗にしたいもの。

 

本日ご紹介する作品、田口ケンジ『汚物は消毒です』(小学館、全7巻)は、2016年から2018年にかけて「サンデーうぇぶり」で連載された、姉萌えお掃除漫画(?)の決定版。1話12ページというやや短めの尺の中で、日用品を利用した掃除のテクニックが毎回登場するという、読めば何かと役立つこと確実な、素晴らしいお掃除漫画なのです。

 

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田口ケンジ『汚物は消毒です』(小学館)1巻より

清家 司は15歳。幼少期に両親が離婚し、女手一つで育てられてきた少年なのですが、このたび母親の再婚が決まり、その再婚相手の連れ子である清家 ましろという16歳の少女が義姉になりました。

 

突然はじまった同居生活に戸惑う司。ましろは礼儀正しいクールな美人……と思われましたが、その印象は次の瞬間、一変します。ましろはかなりの潔癖症で、掃除をすることが趣味というちょっと変わった少女だったのです。

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田口ケンジ『汚物は消毒です』(小学館)1巻より

ひとたび”掃除スイッチ”が入ってしまうと、もはやゴミや汚れしか目に入っていないかのような勢いで、掃除の豆知識をマシンガンのようにつぶやきながら、一心不乱に掃除を続けるましろ。恍惚の表情を浮かべる彼女は、初対面のときとは別人のようです。

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田口ケンジ『汚物は消毒です』(小学館)1巻より

興が乗ってくると、普段なら絶対言わないような”掃除ダジャレ”まで飛び出すましろ。クールな美人、というのは、あくまでも彼女の一面にすぎなかったのです。そんなましろを見て、司は思うのでした。「掃除狂! この人、掃除狂だ!」と。

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田口ケンジ『汚物は消毒です』(小学館)1巻より

『汚物は消毒です』は、日々の暮らしの中で、「掃除」を通じて司とましろが本当の意味で家族になっていく物語です。……と書くと、司とましろだけが主人公のように思われるかもしれませんが、本作には重要人物がもうひとりいます。

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田口ケンジ『汚物は消毒です』(小学館)1巻より

荒井 透子。彼女は司の幼なじみで、司に恋愛感情を抱いていますが、司はそれに気づいていません。司が義姉と同居をはじめたと聞いて、当然ヤキモキしてしまう透子。恋に奥手な透子ですが、何とかして司を振り向かせようと少しずつ動き始めます。『汚物は消毒です』は、司とましろ、透子の三人が織り成す恋愛ストーリーでもあるのです。

 

作者の田口ケンジ先生(『姉ログ』『異世界ワンターンキル姉さん』など、“姉漫画”の第一人者ともいえる方です)があとがきにも書かれているように、『汚物は消毒です』は主に3つのテーマから構成されている作品です。3つのテーマそれぞれに読みごたえがあるのが凄いです。

 

テーマ①…日常の中の「お掃除」の豆知識:『汚物は消毒です』は、1話につき1つ以上は必ず「お掃除」の豆知識が登場する漫画です。Twitterに転載された豆知識(電子レンジを綺麗にするのにはレモンが有効)が10万回以上RTされたという事件もあったほどです。(なお、転載したコスプレイヤーの人はその後、『汚物は消毒です』と本当にコラボし、ましろのコスプレを披露していました)

 しかも、やみくもに知識を並べ立てるわけではなく、各話の導入部からオチまでストーリーとして読みやすいように工夫されているので、素直に「へぇー!そうなんだ!」と読み進めていけるような作品です。

 

テーマ②…「ステップファミリー」の物語:「親の再婚で義姉ができて同居生活が始まる」というのは、単に“ラブコメ空間”を作り出すためだけの設定ではありません。亡くなったましろの実母について司がましろの話を聞く回や、司が実父と再会する回、司にとって”異母きょうだい”である妹に初めて会う回など、『汚物は消毒です』は「血のつながりがなくても家族になれる」ということを真摯に描いていく作品でした。あくまでもコメディ作品ではありますが、読んでいて心があたたかくなるような漫画です。一話一話のクオリティが高いのです。

 

テーマ③…三角関係?のような恋愛ストーリー:司に想いを寄せる透子が、5巻のラストで"ある行動"に出てから、『汚物は消毒です』は恋愛ストーリーとしても一気に加速していきます。司にとって透子は”大切な幼なじみ”ですが、今まで恋愛対象とは思ってきませんでした。”幼なじみ”という関係が”恋人”にステップアップすることはあるのでしょうか? そして、司と透子が接近することで、ましろの司に対する想いにも変化が…??

個人的には、最終7巻の結末は完璧なラストだったと思います。ましろの司への想い、透子の司への想い、そして司の二人への想い、それぞれが叶った結末だったと言えるのではないでしょうか。(7巻のオビのキャッチコピーが、この結末を象徴するような一文だったのですが、ややネタバレ気味になるのでここには書きません。本当に見事な惹句でした、とだけ書いておきます)

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田口ケンジ『汚物は消毒です』(小学館)1巻より

すぐれた一話完結型コメディであり、お掃除にも詳しくなることができ、また青春・恋愛ストーリーとしても素晴らしいクオリティを持った作品――それが『汚物は消毒です』なのです。これは読まない手はありませんよ。是非是非、年末の大掃除を始める前に、一読されることをお薦めいたします。