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【週末イッキ読み推奨】固い絆で結ばれた少年少女が、強敵と競い合い、戦友たちと出会い、困難を乗り越え、戦いの中で成長していく……その戦いの舞台は「コスプレ」! ジャンプ+で圧倒的支持を受ける作品『2.5次元の誘惑』は、ただのお色気漫画のように見えて実は王道熱血青春少年漫画なのです!

 

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橋本悠『2.5次元の誘惑』(集英社)1巻より

俗に「友情・努力・勝利」が少年ジャンプの特徴だと言われたりしますが、最近の少年ジャンプの作品は、何だかどんどん先鋭化しており「友情・恐怖・無慈悲な死」みたいなダークファンタジー寄りの作品が増えているような気がします。「子どもが読んだら泣くよねこれ」的な。

 

ダークでシリアスな作品ももちろん楽しいですが、「友情・努力・勝利」の王道少年漫画が恋しくなる時もありますよね。そんなあなたにお薦めしたいジャンプ漫画が『2.5次元の誘惑』(集英社、7巻まで発売中)です。但し掲載されているのは少年ジャンプではなく「ジャンプ+」ですし、最初の数話はよくあるお色気漫画みたいな感じで始まる作品です。ところが……第3巻の途中ぐらいから急に王道少年漫画に化けるというのが注目ポイントなのです。

 

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橋本悠『2.5次元の誘惑』(集英社)1巻より

高校2年生の奥村くんは、漫画やアニメに耽溺し「3次元の女に興味はない」と断言する、こだわり強めのオタク男子。そんな彼が部長を務める漫画研究部(部員一名)に、1年生の天乃 リリサがやって来たところから物語は始まります。

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橋本悠『2.5次元の誘惑』(集英社)1巻より

奥村とリリサには、共通点がありました。それは、かつて少年ジャンプで連載されていた漫画『アシュフォード戦記』のヒロイン、”リリエル”が大好きでたまらないということ。

かくして漫画研究部の部員となったリリサですが、実は彼女はリリエルを愛するあまり「リリエルになりたい」という思いが高まり、その結果コスプレイヤーとしてリリエルのコスプレをするようになった少女だったのです。その完成度の高さは、こだわりの強い奥村をして「本物だ」と言わしめるほど。

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橋本悠『2.5次元の誘惑』(集英社)1巻より

コスプレも広義の「漫画研究」の範疇。こうして、漫画研究部でコスプレ活動を行う日々が始まったのです。「3次元の女に興味はない」と豪語していた奥村でしたが、2.5次元の、しかもちょっと過激な恰好の女子の前でもその理性を保つことができるのでしょうか?

 

……と第一話のあらすじを説明していくと、少年誌によくある「お色気漫画」のような印象になると思います。しかし、『2.5次元の誘惑』が大きく化けるのはこの後でした。

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橋本悠『2.5次元の誘惑』(集英社)3巻より

漫画研究部が、実は三年前から部の要件を満たしていなかったことが発覚。何らかの実績を残して学校に活動報告をしなければ廃部となり、たくさんの思い出が詰まった部室を明け渡さなければいけないということになってしまいました。「健全な活動報告をしなければ」と考えた奥村とリリサは、放課後児童教室での漫画朗読ボランティアなど、それっぽい活動に取り組みます。しかし――

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橋本悠『2.5次元の誘惑』(集英社)3巻より

二人は結局、アリバイ作りのような活動ではなく「正々堂々とコスプレイベントに出て、それを活動報告にする」という決断をします。コスプレをしていると知られれば偏見の目で見られるかもしれないけれど、自分たちがしている活動は、本当は決して隠すべきものではないはずだからと。「コスプレで学校に認められたい」という向こう見ずにも思える二人の情熱が、教師や生徒会を動かしていくくだりは感動的です。

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橋本悠『2.5次元の誘惑』(集英社)3巻より

そして臨んだイベント「横須賀コスプレストリーム」、通称「コススト」。いよいよここからが、王道少年漫画の始まりでした。ここで二人は、”コスプレ四天王”の一角にも数えられるプロのコスプレイヤー、「753♡」(なごみ)と出会います。

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橋本悠『2.5次元の誘惑』(集英社)3巻より

企業から依頼を受け、自分でもよく知らないようなキャラクターのコスプレを繰り返す753。それは、「キャラクターへの愛」でコスプレをしているリリサ達とは正反対。”邪道”のようにも思えます。

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橋本悠『2.5次元の誘惑』(集英社)3巻より

しかし、753には753の信念があります。753が愛しているのは「コスプレ」という文化そのもの。しのぎを削ってきたライバル達が就職などでコスプレから引退していく中、753はプロのコスプレイヤーになることでコスプレに殉ずる道を選んだのです。また「こういう想いでなければ失格」というような制約に、後進のコスプレイヤーには縛られてほしくない、という密かな思いも、実は753は持っていました。

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橋本悠『2.5次元の誘惑』(集英社)3巻より

自分たちとは違う信念を持つ、強力なライバルとの出会いで、自信を失いかけるリリサ。パートナーである奥村がそんなリリサを支えていく様は「青春部活漫画」の真骨頂ともいえるシーンでした。そしてこのイベントを通じて、リリサと753がお互いの存在を意識したことで二人のパフォーマンスに変化が生まれていき、リリサも753も新たな境地にたどり着くのです。友に支えられ、強敵との戦いの中で成長していく――題材こそ「コスプレ」ではありますが、これはまさに王道少年漫画の弁証法そのもの

 

753は特にわかりやすい例ですが、普通の漫画であれば「悪役」として描かれてもおかしくないキャラクターが、「実は悪役ではなく、いい子なんだよ」と描かれるのが、『2.5次元の誘惑』の特徴だと思います。

・2次元にしか興味がないオタク少年。

・露出の多いコスプレをするオタク少女。

・企業からの依頼でよく知らないキャラのコスプレをする人。

・就職して公務員になったからコスプレをやめた人。

・コミュ障すぎて、話しかけても会話にならない人。

・漫画やアニメに詳しくないのにコスプレを始めた人。

どのキャラも、属性だけ抜き出すと「イヤな感じ」に思えますよね。実際、初登場時には「コイツ、うぜぇな」と思ってしまうようなキャラばかりです。しかし、読み進めていくと毎回「何だこの子……実はいい子なんじゃん!!」となるのです。この漫画、ほんっとうにシナリオが上手い。「初登場時はイヤな敵だったキャラが、のちのち主人公の味方になる」という展開は少年漫画によくあるパターンですが、あれの究極進化系みたいな作品と言っていいかもしれません。悪役不在、みんな違ってみんな素敵なのが本作なのです。

 

お色気漫画かと思いきや青春部活漫画に変貌する『2.5次元の誘惑』。3巻後半〜4巻の「横須賀コススト編」で最初の大波が来ます。そしてその後、「夏コミ編」でさらに熱い展開が待っていますので、是非とも今日発売されたばかりの7巻までイッキ読みしていただきたい作品です。いちご100%』だと思って読み始めた漫画がいつの間にか『ちはやふる』になっていたような衝撃が待っています。

 

第1話はこちら↓から

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  • 作者:橋本 悠
  • 発売日: 2020/07/03
  • メディア: コミック
 
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