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【知られざる名作】山手線は140円で土星に繋がり、放課後の校舎はゼリー人間が占拠、人工知能が反乱を起こし、テーマパークは地底人が支配する! 女子高生2人組の”すこしふしぎ”な高校生活を描いた、新しくて懐かしい作品『好奇心は女子高生を殺す』はセンス・オブ・ワンダーに溢れてる!

 

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高橋聖一『好奇心は女子高生を殺す』(小学館)1巻より

好奇心は猫をも殺す」というイギリスのことわざがあります。西洋では“A cat has nine lives.”(猫には命が九個ある)と言われるほど、「猫はしぶとい生き物」だと認識されているそうなのですが、そんな猫ですら好奇心を持ったせいで命を落とすことがあるのだぞ、つまり「過剰な好奇心を持つと身を滅ぼすぞ」というような意味の脅し文句なのですね。

 

ところで、高橋聖一先生の名作『好奇心は女子高生を殺す』(小学館、全2巻)のヒロインのひとり曰く、「世界一好奇心旺盛なのは女子高生なんだよ」とのこと。そんなヒロインたちに引き寄せられるように、”すこしふしぎ”な出来事が次々と巻き起こる『好奇心は女子高生を殺す』を本日はご紹介します。

 

※『好奇心は女子高生を殺す』の第1話〜第3話はこちら↓から読めます

www.sunday-webry.com

 

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高橋聖一『好奇心は女子高生を殺す』(小学館)1巻より

ある高校の入学式の日。新入生の柚子原 みかんは、窓の外に不思議な建物を見つけ、「ちょっと行ってみない?」と、初対面の同級生・青紫 あかね子を誘います。

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高橋聖一『好奇心は女子高生を殺す』(小学館)1巻より

好奇心旺盛で能天気なみかんと、クールで真面目なあかね子。二人が向かった建物は「初体験館」という見るからに怪しい施設。受付の人は言います……「ここはお客様が未体験の出来事を体験して頂く施設になっております。ただし、未体験の出来事を成功させるまでは決して出ることはできません」と……。

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高橋聖一『好奇心は女子高生を殺す』(小学館)1巻より

二人が入場口をくぐると、そこは暗闇。そして爆発音と共に煙に包まれ、その煙が晴れた時、なんと二人は無人島にワープしていたのでした。

 

『好奇心は女子高生を殺す』は、2016年から2019年にかけて、「サンデーうぇぶり」で連載された全30話の作品です。毎回不思議な現象が起こり、みかんとあかね子の二人が謎に立ち向かったり騒動を解決したりしていく、基本的に「一話完結」のストーリーで綴られていくスタイルのお話です。

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高橋聖一『好奇心は女子高生を殺す』(小学館)1巻より

一話完結の連載だけあって、毎回起こる「不思議な現象」もバラエティに富んでいます。高校へ向かうために乗っていた山手線は、いつの間にか「土星」に到着してしまうし、夜の校舎では謎の「ゼリー人間」たちが学業に励んでいます。

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高橋聖一『好奇心は女子高生を殺す』(小学館)1巻より

ひょんなことから「地球刑事」に任命されたあかね子は電子の世界で人工知能と戦い、テーマパークに遊びに行くと地上を乗っ取ろうとする「地底人」に出会ってしまいます。

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高橋聖一『好奇心は女子高生を殺す』(小学館)2巻より

『好奇心は女子高生を殺す』のすごいところは、これだけのパワフルなSF設定を次々と投入しておきながら、1話12ページぐらいで綺麗にオチがついてあっさり終わってしまうというところ。次の話では何事もなかったかのように日常に戻っており、そしてまた新しいふしぎが登場するというわけです。

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高橋聖一『好奇心は女子高生を殺す』(小学館)2巻より

漫画をお薦めする時に、他の作品・作者の名前を引き合いに出すのは邪道です。それは重々わかっているのですが、あえて言わせてください。『好奇心は女子高生を殺す』は、藤子・F・不二雄先生が現代に蘇ったらきっと描いていたであろう作品だと。スマホを持ち、ユニクロに行き、買ったゲームを積む……そんな現代人の感覚を持ったキャラたち(主人公の二人)が、『ドラえもん』や『キテレツ大百科』のような「ふしぎなことが当たり前」の世界に飛び込んでいく……『好奇心は女子高生を殺す』はそういう作品なのです。

 

そしてまた、『好奇心は女子高生を殺す』はクセの強い二人の女子の友情物語(というか九割方「百合」と言ってもいいと思う…)でもあります。きっかけは入学式の日、たまたま席が近かったから知り合っただけという二人が、いろいろな出来事を通じてかけがえのないコンビになっていきます。第1話は入学式で始まった物語が、最終話は卒業式で完結するのですが……歌にあるような「私まだ女子高生でいたいよ」という気持ちとの折り合いのつけ方が完璧なんですよね。ああ、こんな高校生活を送りたかった……(色んな意味で無理)。

 

そんな名作『好奇心は女子高生を殺す』を筆者は全力でお薦めしたいのですが、集めていただく際の注意点として、(1巻は紙・電子両方で発売されているのですが)2巻は電子版しかないということをお伝えしなければなりません。個人的には「名作は紙で(も)集める」をモットーにしているので、是非2巻を紙でも出していただきたいのですが(小学館様本当にお願いします)、統一感を持って集めたい方は電子で揃えるのがお薦めかもしれません。

 

ただし! 紙の1巻ではカバーの折返しやカバー裏、裏表紙などに描かれている「おまけ漫画」が電子版では収録されていなかったりするので、電子で読んでみて気に入った方はさらに紙でも1巻を買ってみるのもアリ……かもしれません……(本編の内容は同じなので強くは言いませんが……)。