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【週末イッキ読み推奨】「SF」であり「ミステリ」であり、「サバイバルストーリー」であり「ギャグ漫画」でもある! 篠原健太先生の『彼方のアストラ』は、完璧なプロットと巧みな伏線を用いて極限状況下での少年少女たちの冒険と成長を描いた、”漫画の面白さ”に満ち溢れた青春群像劇の大傑作です!

 

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篠原健太『彼方のアストラ』(集英社)1巻より

今週発売された『週刊少年ジャンプ』で、2月8日発売の号から篠原健太先生の新連載が始まることが発表されました! やったー! 個人的にはかなり嬉しいです。篠原健太先生といえば、代表作は2007年〜2013年に少年ジャンプで連載された『SKET DANCE』(全32巻)、そして2016年〜2017年にジャンプ+で短期集中連載された『彼方のアストラ』(全5巻)です。

 

2019年には「マンガ大賞」を受賞し、TVアニメ化もされた『彼方のアストラ』は、練りに練られた完璧なプロット、物語の随所で巧みに張られた伏線、そして主要人物全員が魅力的という圧倒的なキャラクター造形で描かれる少年漫画の大傑作です。すでにお読みになっている方もかなり多いとは思いますが、本日はこの『彼方のアストラ』について、その内容をあらためてご紹介していきます。

 

※『彼方のアストラ』の第1話はこちら↓から読むことができます。

shonenjumpplus.com

 

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篠原健太『彼方のアストラ』(集英社)1巻より

今よりも少し未来の世界――。ケアード高校に通う少年少女たちが、「惑星キャンプ」という行事に出発するために宇宙港へと集まっていました。「惑星キャンプ」とは、9光年先の星「惑星マクパ」へ行き、大自然の中、生徒だけで5日間を過ごすというもの。

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篠原健太『彼方のアストラ』(集英社)1巻より

集まったのは、探検家を目指す少年カナタ・ホシジマなど9人。メンバー選定は学校側が行っており、ほとんど初対面に近い顔ぶれで旅が始まります。

 

宇宙船は4時間かけて惑星マクパに到着。9人を降ろすとすぐに帰っていきます。ここからは、生徒たちだけで力を合わせて活動する5日間……のはずだったのですが、彼らの前に謎の球体が現れたことで事態は一変します。

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篠原健太『彼方のアストラ』(集英社)1巻より

謎の球体は9人を次々と呑み込んでいきます。呑み込まれた彼らは次の瞬間、宇宙空間へと放り出されていました。

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篠原健太『彼方のアストラ』(集英社)1巻より

近くを漂流していた無人の宇宙船に乗り込んで、ひとまず難を逃れたものの……この宇宙船が浮かんでいたのは、惑星マクパとは似ても似つかぬ、氷に覆われた星を見下ろす周回軌道上。彼らは、謎の球体によって9光年どころか5000光年以上離れた場所に飛ばされてしまっていたのでした。

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篠原健太『彼方のアストラ』(集英社)1巻より

「9光年」離れた惑星マクパに行くのにも4時間かかります。「5000光年」の距離を進もうとすれば3ヶ月はかかってしまいます(それでも超速いですけど)。しかし、宇宙船内に残されている水や食料はせいぜい3日分。そしてこの船に目一杯、水や食料を詰め込んだとしても20日分が限度。つまり彼らが帰還するために残された道は、「色々な惑星を経由し、水や食料を採取しながら進む」ことだけ。

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篠原健太『彼方のアストラ』(集英社)1巻より

カナタはこの宇宙船を、船内にあったプレートにちなみ「アストラ号」と名付けました。こうして、宇宙の彼方で遭難した少年少女たちの、命懸けの大冒険が始まったのでした。

 

『彼方のアストラ』は、一度読み始めたらもう止まらない、全5巻を一気に読まずにはいられない大傑作ですので、お薦めする言葉も「とにかく読め!」で充分なのかもしれませんが(第1話の序盤が妙に昔のギャグ漫画っぽいテイストなのですが、そこさえ乗り越えてしまえばもう止まらないと思います)、それでは芸がないので『彼方のアストラ』の面白さをいくつかの要素に分けて説明してみたいと思います。

 

①「SF」としての面白さ:ここまで紹介してきたように、『彼方のアストラ』は宇宙旅行が日常になっている未来の世界の物語です。彼らが立ち寄る5つの惑星にはそれぞれ科学考証に基づく設定があり、同じような惑星はひとつもありません。「その惑星特有の危険」を乗り越えながら冒険し、水や食料を集めていくという面白さがあります。

 

②「ミステリ」としての面白さ:第1巻のラストで、謎の球体を使い、彼らを5000光年の彼方へワープさせた”犯人”が彼ら自身の中にいることが明らかになります。いったい誰が? そして何のために? 『彼方のアストラ』は、9人の中にいるはずの犯人が誰かを考えながら読む一種のミステリ作品でもあります。

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篠原健太『彼方のアストラ』(集英社)1巻より

そして、物語が進むにつれて明らかになっていく、ある陰謀の存在。その真相が明らかになった時、思わず第一話から読み返して伏線を確認したくなることは間違いありません。本編に書かれていること、そして書かれていないことまで全てが伏線になっているような作品なのです。ここまで巧みに張り巡らされた仕掛けを楽しめる漫画はそうありません。

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篠原健太『彼方のアストラ』(集英社)1巻より



宇宙船内を舞台にした青春SFミステリということで、1975年に発表された萩尾望都先生の名作『11人いる!』を想起される方も多いと思います。『彼方のアストラ』の序盤で、登場人物のひとりルカ・エスポジトが「これ…何かの試験とかじゃないすか?」と発言するシーンは、『11人いる!』の読者であればニヤリとできるオマージュですし、読み進めていくとルカというキャラクターそのものが萩尾望都オマージュであることがわかったりします(読めばわかります)。

 

③「サバイバルストーリー」としての面白さ:たとえ宇宙空間でなかったとしても、3ヶ月もの間、高校生だけで集団生活するというのは難しいもの。まして5000光年の距離を旅するわけですから、宇宙空間でも惑星の上でも未知の危険が次々と訪れます。9人の中に”刺客”が潜んでいることを除いても、彼らの生活は毎日が命懸け。全5巻のストーリーの中で様々な種類の危険が次々と襲いかかってくるので、読者は一瞬たりとも退屈する暇がありません。

 

④「ギャグ漫画」としての面白さ:もしかするとこれが本作の最大の特徴かもしれません。深刻な事件に巻き込まれるSF&ミステリ&冒険ストーリーでありながら、登場人物たちの間ではいつもボケツッコミのやりとりが行われ、常に笑いが絶えないのです。主要登場人物が9人もいるので、最初は「こいつら全員おぼえられるかな……」と不安になってしまいますが、ボケツッコミの会話が癖になっていき、あっという間に全員大好きになってしまうのです。キャラを立たせる会話の妙がすごい。でも全員好きになってしまうので、「この中に犯人がいてほしくない……」という新たな悩みが発生してしまうのですが。

 

そんなわけで、長々と紹介記事を書いてきましたが、ここに書いてあることは『彼方のアストラ』の面白さのほんの1割程度だと思ってください……だって本当に面白い箇所はネタバレになるから書けないんだもん! まだ読んだことないという方は、騙されたと思ってジャンプ+で無料公開されてる1話、2話、3話を読んでみてくださいね。気がついたら全巻買って読み始めてると思います。

 

彼方のアストラ 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
 
彼方のアストラ 2 (ジャンプコミックスDIGITAL)
 
彼方のアストラ 3 (ジャンプコミックスDIGITAL)
 
彼方のアストラ 4 (ジャンプコミックスDIGITAL)
 
彼方のアストラ 5 (ジャンプコミックスDIGITAL)