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【知られざる名作】ふたりで観ると、映画はもっと楽しい! 毎週金曜日の夜に”お泊まり映画鑑賞会”を開く女子大生、小春と麻由美……タイプの違うふたりが、観た映画についてあれこれ感想を語り合う、そのゆるやかな時間が何よりも尊い! 『私と彼女のお泊まり映画』の優しい世界に浸ってみませんか?

 

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安田剛助『私と彼女のお泊まり映画』(新潮社)1巻より

先日、たまたまラジオの語学番組を聴いていて知ったのですが、英語では「親友」を表すのに「best friend」だけでなく「soulmate」という言い方もあるのだとか。直訳すると「心の友」でジャイアンっぽくなってしまいますが、要は「価値観がぴったり合う相性抜群の仲間」ということ。恋人から友人まで幅広い対象に使える言い方なのだそうです。

 

本日ご紹介する『私と彼女のお泊まり映画』(新潮社、全3巻)の登場人物、小春と麻由美はまさに「ソウルメイト」という言葉で言い表すのがぴったりな関係。容姿や性格のタイプは違えども相性抜群なふたりが、映画を観てあれこれ語り合う週末のゆるやかな時間を楽しむ作品です。

 

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安田剛助『私と彼女のお泊まり映画』(新潮社)1巻より

佐藤 小春黒澤 麻由美ふたりの女子大生は、もともと高校の同級生でした。高校生の頃、あることがきっかけで仲良くなり、一緒に映画を観るようになったふたり。進学して実家を離れた今でも、毎週金曜日の夜には麻由美の部屋に泊まり、映画鑑賞会を開いているのでした。

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安田剛助『私と彼女のお泊まり映画』(新潮社)1巻より

一人暮らしをしている麻由美の部屋に、小春が映画のレンタルDVD持参で遊びに来ます。観る作品を選ぶのは、映画に詳しい(自称)小春の役目……ですが、時には麻由美が選んだり、二人揃ってレンタル屋さんに行くことも。

 

この作品がおもしろいのは、主人公がふたりいるというところ。当たり前のようですが、同じ映画を観ても、小春と麻由美では微妙に感想が違います。映画を観終わって、ふたりが話し始めてからがこの漫画の一番おもしろいところなのです。結末がハッピーエンドなのかバッドエンドなのかで論争になったり、ホラー映画のせいで眠れなくなったり、映画に出てきたキャラクターのモノマネ大会が始まったり……仲良しの二人組が映画を通じてさらに絆を深めていく様は、ベタな言いかたなのであまり言いたくありませんが、この言葉がぴったりなのであえて言いましょう、「尊い」と!

 

話と話の間のおまけページでは、その回でとりあげた映画の簡単な内容紹介と共に、「小春レビュー」「麻由美レビュー」のコーナーがあり、さらにそのレビューをきっかけにして欄外で小春と麻由美のイチャイチャ……もとい、会話に花が咲いていたりするのも面白いところです。

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安田剛助『私と彼女のお泊まり映画』(新潮社)1巻より

ところで、この世のすべての漫画は大きく二つに分けられます。すなわち「百合」か「百合じゃない」かです。百合っぽい雰囲気でもよくよく読むと百合じゃない作品もありますし、逆に百合と気づかれにくいけど内容的には完全に百合、という作品もあります。

なんとなく「百合」っぽい雰囲気の『私と彼女のお泊まり映画』ですが、百合なのでしょうか? それともnot百合なのでしょうか?

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安田剛助『私と彼女のお泊まり映画』(新潮社)2巻より

小春は同級生から合コンに誘われたりします。小春自身も結構乗り気な様子。しかし男子のほうが「金曜日」を指定してきてると聞いて、風向きは突然変わります。

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安田剛助『私と彼女のお泊まり映画』(新潮社)2巻より


「毎週金曜は大切な日だから そいつのために空けてやるつもりはないかな」。あくまで麻由美が最優先、合コンは二の次、というように見えますね。

 

一方、『ブリジット・ジョーンズの日記』を観た直後の麻由美からは「30歳過ぎたって独りでいるつもりないんだけど…」という意味深な発言。これを聞いた小春はどう思うのでしょうか?

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安田剛助『私と彼女のお泊まり映画』(新潮社)2巻より

世間には、結論を最後まではっきりさせず「この作品が百合なのかどうかは読者の解釈に委ねます」という漫画もまれによくあります(これをシュレーディンガーの百合と言います)。が! 『私と彼女のお泊まり映画』はそういう作品ではありません。全3巻を読めば、ふたりの関係性の着地点ははっきりわかると思います。そして、その結論に至るまでの流れが丁寧に描かれているので、なんというか読者の納得度もとても高いのではないかと思います。

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安田剛助『私と彼女のお泊まり映画』(新潮社)1巻より

同じ高校に通っていたものの、最初は特に接点がなかった小春と麻由美。そのふたりが仲良くなったのは、レンタル屋さんで偶然同じ棚を見ていたことがきっかけでした。そこから映画鑑賞会が始まり、ふたりが親元を離れてもそれは続いたわけですが……果たしてこの優しい関係性がどこに着地するのか。是非コミックスを読んでその結末を見届けていただきたい作品です。

 

※第1話の試し読みを探したのですが、軽く検索した限りでは見つからなかったです……が、なぜか新潮社のサイトで「第11話」が読めるようになっていたのでリンクを貼っておきます……。一話完結形式のストーリーなので、いきなり第11話から読んでも多分面白いと思います。(ちなみに全31話の作品です)

www.comicbunch.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【重要なお知らせ】

『私と彼女のお泊まり映画』は全3巻で完結した作品ですが、実は後日譚が作者・安田剛助先生のホームページで連載されています。これが、めちゃくちゃ破壊力の強い漫画なので……尊さを致死量の3倍ぐらい浴びることになるので、絶対に読んでいただきたいのです。

(※リンク先には『私と彼女のお泊まり映画』の結末に関する記述があります。)

http://yasudadou.futene.net/comic1/dousei/dousei.html

この後日譚、単体で読んでも充分に面白いとは思います。ですが!「スターウォーズを観る順番」ではないですが、最初に『私と彼女のお泊まり映画』をすべて読んでから→この後日譚を読む、という順番で読んでもらうと破壊力が倍増すると思いますので、まずは是非『私と彼女のお泊まり映画』を読んでみてください。もう本当にすごいことになるので……何度も胸を撃ち抜かれるので……