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【今週のPowerPush】さすらおう、この日本中を! 新人漫画家・鈴ヶ森 ちかが、目的地だけふわっと決めて、あまり下調べとかせず、出たとこ勝負の旅に出る! 『ざつ旅-That’s Journey-』は、新ジャンル「SNS連動型ドキュメンタリー旅漫画」だ!

 

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石坂ケンタ『ざつ旅-That's Journey-』(KADOKAWA)1巻より

「旅に出ます。探さないでください。」そんな書き置きを残して、2~3日失踪してみたい気分になること、きっと誰にでもありますよね。筆者は半月に一回ぐらいはそんな気分になります。

 

知らない土地への旅行は、いわばちょっとした非日常へのエスケープ。そんな旅行を疑似体験させてくれる作品を本日はご紹介します。石坂ケンタ先生の『ざつ旅-That’s Journey-』(KADOKAWA、3巻まで発売中)は、SNS連動型ドキュメンタリー旅漫画という斬新な作品なのです。

 

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石坂ケンタ『ざつ旅-That's Journey-』(KADOKAWA)1巻より

鈴ヶ森 ちかは、漫画家になることを目指す18歳の女子大生。新人賞に入選し、賞金100万円を手にしたところまでは良かったのですが、次の目標「読切作品を雑誌に掲載する」にはなかなか手が届きません。

 

編集さんからは「スルッと読めすぎて何も残らない」と言われ、「最近ハマってることとか好きなことを取り入れる」といったような”とっかかり”が欲しい、というアドバイスを受けますが、特に「ハマっていること」が無いちかには何も思いつきません。

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石坂ケンタ『ざつ旅-That's Journey-』(KADOKAWA)1巻より

ネームを3本提出し、その全てがボツを喰らった夜。ちかの脳裏によぎったのは「旅に出たい」という思いでした。サイコロを振って行き先を決める旅番組のように、行方も知れぬ旅に出てしまいたい……そんな軽い気持ちで、行き先を決めるためのSNSのアンケートを投稿し、そのまま寝オチしたのでした。

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石坂ケンタ『ざつ旅-That's Journey-』(KADOKAWA)1巻より

翌朝。人気漫画家である”師匠”・糀谷 冬音先生がちかの投稿を拡散したことで、アンケートがバズり、何千票もの投票が行われていました。それを見たちかがまず思ったのは、「もう逃げられない」ということ。そして最終的に思ったことは……「旅にでたい その気持ちはウソじゃないっ」という確信でした。

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石坂ケンタ『ざつ旅-That's Journey-』(KADOKAWA)1巻より

幸か不幸か、ちかの手元には新人賞の賞金100万円がありました。ちかはこれを路銀として、SNSアンケートで1位となった「上の方」に向かって旅立つのでした。……って、「上の方」って具体的にはどこ!?

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石坂ケンタ『ざつ旅-That's Journey-』(KADOKAWA)1巻より

『ざつ旅-That’s Journey-』は、このように主人公の「ちか」がSNSのアンケート機能を使い、行き当たりばったり、出たとこ勝負の旅をしていく物語です。1話目では福島、2話目では宮城……というふうに1話につき1つの県を旅していくのが特徴で、既刊3巻までで13の県を踏破しています。

 

ちかの旅は、大体の方向をSNSアンケートで決めた後、「温泉がたくさんあるとこに行きたいから花巻!」「出雲大社?よく知らないけど行ってみよう!」と、非常に「ざつ」なノリで目的地が決まっていきます。「未知の出来事」「不測の事態」に遭遇して漫画のネタにしたい、あるいは漫画家としての発想の幅を広げたいというような思いが根底にあるのだと思いますが、とにかくそのフットワークの軽さが爽快なのです。

 

昨今の社会情勢や予算の都合でそうそう旅に出られない筆者からすると、読んでいてとても楽しく、またある種「自分の分身が旅をしている」かのような不思議な嬉しさも感じます。

 

1話目、2話目はちかの一人旅ですが、3話目以降からは「複数名で旅するパターン」が増え始め、友人の蓮沼 暦、後輩の鵜木 ゆい、師匠の糀谷 冬音やその友人・天空橋 りりなど、個性的かつかわいい女性キャラたちが旅に同行するようになっていきます。筆者は、お酒大好きな漫画家・天空橋 りり先生が特に好きです。「いい景色が酒に溶けるとうまいんだ」は名言。

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石坂ケンタ『ざつ旅-That's Journey-』(KADOKAWA)2巻より

ところで、毎回SNSのアンケートで行き先を決めているちかですが、なんと「鈴ヶ森 ちか」のtwitterアカウントは実在していて、『ざつ旅-That’s Journey-』の次の行き先を決めるアンケートも実際に行われています

 「鈴ヶ森 ちか」の旅の様子は、このアカウントで随時ツイートされており、旅の写真なんかもリアルタイムで見ることができます。この旅の模様を石坂 ケンタ先生が漫画化したものが『ざつ旅-That’s Journey-』というわけですね。そう、『ざつ旅-That’s Journey-』は、世にも珍しいSNS連動型ドキュメンタリー旅漫画だったのです!

 

 

出たとこ勝負の旅のため、「目的地にたどり着いたら工事中だった」というような「不測の事態」が起こるのが、『ざつ旅-That’s Journey-』あるある。恒例行事のようになり、もはや”ざつ旅現象”とも呼べるような感じにもなってきたこの「不測の事態」の数々から、ちかは漫画家として成長するためのヒントを掴むことができるのでしょうか。続きが非常に気になる作品です。

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石坂ケンタ『ざつ旅-That's Journey-』(KADOKAWA)2巻より

第1話の終盤で、ちかが偶然見つけた「階段が1225段ある神社」。それを登りきった先で、ちかの目に映った景色とは……そしてその経験が、くすぶっていたちかの心境をどう変えていったのか……それは是非『ざつ旅-That’s Journey-』本編でお確かめください。

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石坂ケンタ『ざつ旅-That's Journey-』(KADOKAWA)1巻より

 

追伸・あっ、アニメ化する際はOP曲を奥田民生の「イージュー★ライダー」、ED曲を奥田民生の「さすらい」にしていただきたいです!

 

第1話の試し読みはこちら↓から

comic-walker.com

 

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