最強おもしろ漫画紹介ブログ

自信を持ってお薦めできる漫画しか紹介しません。週3回更新。

【知られざる名作】谷中のメロンパン、銀座のサンドイッチ、門前仲町の豆かん……放課後、ワンコインで食べられる美味しいものを探し回る女子高生ふたり組の友情を、東京の四季を描き出す美しいカラーイラストと共に綴る『東京黄昏買い食い部』は、全1巻でまとまった庶民派グルメガイドの決定版かも!

 

f:id:omosiro_manga:20201216165237p:plain

鈴木小波『東京黄昏買い食い部』(KADOKAWA)より

「東京」とひとことで言っても、その中には色々な町があります。電車のひと駅ごとに異なる個性や特色を持った町があって、そんな様々な町が数えきれないほど集まった集合体が「東京」……なのではないかと思います(地方在住者からすると、その多様さが羨ましかったり、妬ましかったり…笑)

 

本日ご紹介する作品、鈴木小波先生の『東京黄昏買い食い部』(KADOKAWA、全1巻)は、そんな東京じゅうの美味しいものを探し回る、女子高生ふたり組のお話です。

 

f:id:omosiro_manga:20201216165344p:plain

鈴木小波『東京黄昏買い食い部』(KADOKAWA)より

いつも元気なお嬢様・双葉 葵と、まじめ気質な長身少女・有馬 巴は、同じ高校に通う一年生。ふたりは放課後、「買い食い部」という謎の活動に取り組んでいます。

f:id:omosiro_manga:20201216165443p:plain

鈴木小波『東京黄昏買い食い部』(KADOKAWA)より

買い食い部の掟、それは

一、ワンコイン内でおさめるべし

一、通学路内で探すべし

一、放課後4時〜7時の3時間内とする

というもの。実際は連載が進んでいくにつれてこの掟は結構うやむやになっていく(朝に活動したり、結構遠くまで行ったり)のですが、ともかく「500円以内で食べられる東京の美味しいもの」を探しているふたりなのでした。

 

ふたりが出会い、「買い食い部」の活動を始めたのは、実は偶然のきっかけによるものでした。高校入学から二ヶ月たった頃、学校帰りに大雨で電車が遅延、おまけに傘を電車内に置き忘れたまま降りてしまうという「泣きっ面に蜂」状態で、秋葉原駅のホームで乗り換え待ちをしていた巴は、すぐ近くに同じクラスの少女がいることに気づきます。

f:id:omosiro_manga:20201216165528p:plain

鈴木小波『東京黄昏買い食い部』(KADOKAWA)より

お互いに、まだ相手の名前を覚えておらず、話しかけるのも躊躇ってしまうような状況。そんな二人を結びつけたのが「買い食い」でした。

f:id:omosiro_manga:20201216165603p:plain

鈴木小波『東京黄昏買い食い部』(KADOKAWA)より

「今から『買い食い部』の部活動をするんだけど 一緒にしない?」「非公認で 部員は私一人だけどね」

駅のホームで一緒にホットミルクやフルーツ牛乳、あんぱんや蒸しパンを食べたふたりは、いつの間にか仲良くなっていたのでした。そして、これをきっかけに、ふたりの「買い食い部」の活動がスタートするのです(筆者は、さりげないような感じで描かれたこのエピソードがとても好きなのです……友達になるのに大袈裟な理由なんていらないんですよね。青春だなあ……)

f:id:omosiro_manga:20201216165644p:plain

鈴木小波『東京黄昏買い食い部』(KADOKAWA)より

『東京黄昏買い食い部』は、「皐月(秋葉原)」「神無月(銀座)」など、1ヶ月につきひとつの町のグルメを紹介する、全12章で構成された物語です。そして、1話ごとに「その月のその町」を描いた美しいカラーページがついてくるのが特徴的です。

筆者は電子版で購入したのですが、紙版でもこれらのページはカラーで収録されているのでしょうか…?? 個人的には「漫画は電子より紙で読みたい派」なのですが、この作品はもしかしたら電子版で購入したほうがいい作品かもしれません。

f:id:omosiro_manga:20201216165734p:plain

鈴木小波『東京黄昏買い食い部』(KADOKAWA)より

二月の門前仲町で、富岡八幡宮の節分豆撒き式に参加したあと、甘味処で「豆かん」を食べながら、二人が将来について語り合うシーンもとても印象的です。誰にも言わなかった「漫画家になる」という夢を初めて明かす葵、そして「大人になっても買い食い部がやりたいです」と語る巴……高校生たちは眩しくて尊いですね。夢と希望にあふれています。嗚呼、若いって素晴らしい、筆者も10代に戻りたい……

 

f:id:omosiro_manga:20201216165822p:plain

鈴木小波『東京黄昏買い食い部』(KADOKAWA)より

……ちなみに、『東京黄昏買い食い部』全12章のうち、3章は「大人になった二人が『漫画家と編集者』として、取材を兼ねて食べ歩く章」、つまり「大人編」になっております。夢、叶ってるじゃん! やったー!

 

そんなわけで、本日の記事で紹介してきた『東京黄昏買い食い部』は、女子高生ふたり(と、その数年後の漫画家&編集者コンビ)の尊い友情を描きつつ、東京各地のワンコインで食べられる美味しいものを描いた作品でした。12ヶ月を12章で描き、一冊で綺麗に完結している漫画でもありますので、「東京の庶民派グルメガイド漫画の決定版」と言ってもいいのではないか! と思います! 筆者がそれほど東京のグルメに詳しくないので、記事タイトルには「かも」とつけてしまいましたが!(ちょっと弱気)

 

第1話の試し読みはこちら↓から(連載時は『黄昏の買い食い部』という題名だったみたいですね)

comic.webnewtype.com