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【週末イッキ読み推奨】時は1998年、世紀末の日本でカードゲーム「マジック:ザ・ギャザリング」に熱中する少年の恋と冒険! 『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』は、「マジック〜」のルールを知らなくても楽しめる最高の青春ストーリーだ!

 

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伊瀬勝良・横田卓馬『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』(KADOKAWA)1巻より

突然ですが、90年代に皆さんは何をしていましたか。

90年代といえば、筆者はまだ小学校も卒業していない頃。「ノストラダムスの大予言」が流行ったり、ワールドカップに日本代表が初めて出場したり、宇多田ヒカルがデビューしたり……子ども心に、印象深い出来事が次々と起こる時代でした。

本日ご紹介する『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』(KADOKAWA、5巻まで発売中)は、90年代の終盤――まさに世紀末の日本を舞台にした物語です。

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伊瀬勝良・横田卓馬『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』(KADOKAWA)1巻より

 時は、1998年5月。地方都市「神河市」に暮らす神納 はじめは、カードゲーム「マジック:ザ・ギャザリング」(以下、「M:TG」と表記)に夢中な中学生。この時代はまだ「中二病」という言葉はありませんが、かなり中二病の素質がある少年です。

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伊瀬勝良・横田卓馬『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』(KADOKAWA)1巻より

勉強が得意なはじめですが、中学校の試験では万年二位。優等生の少女・沢渡 慧美にどうしても勝てません。慧美をライバル視しているはじめは、学校にM:TGのカードを持ち込んでいることを慧美に注意されて逆ギレする始末。

 

そんなある日、はじめは神河市から少し離れた町にM:TGの専門店があるという情報を入手し、自転車で一時間かけてその店「純喫茶しぶやま」を訪ねます。すると、そこで目にしたのは……

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伊瀬勝良・横田卓馬『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』(KADOKAWA)1巻より

M:TGに興じる慧美の姿でした。

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伊瀬勝良・横田卓馬『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』(KADOKAWA)1巻より

学校では優等生として振る舞いながら、友人や家族には内緒でM:TGをプレーしていた慧美。はじめとの対戦を重ねていくうちに、立場は違えど実は似た者同士である二人は、お互いに惹かれ合っていきます。

 

「純喫茶しぶやま」に集まる、クセの強い大人たち。

初めての公式戦出場。

第二のヒロイン・諏訪原 八雲の登場。

はじめの親友・来島 卓との本気の対戦。

 

はじめと慧美の前には様々な出来事や戦いが待ち受けています。そして、それらを通じてはじめと慧美はプレーヤーとしても、人間としても少しずつ成長していくのです。

 

白状しますと、実は筆者はM:TGをやったことがありません。友人がやっているのを横で見たことはありますが、正直、ルールもよくわかっていないのです。ですが、M:TGのルールを知らなくても『すべそれ』はめちゃくちゃ面白い!

 

その理由としては、まず各キャラクターの魅力でグイグイ読ませる青春群像劇であるということ、そしてカードバトルの描写が、少年漫画の王道のような演出(作画担当の横田卓馬先生は、『背すじをピン!と』など少年ジャンプでも連載経験がある作家さんです)なので、ルールがわからなくてもストーリーに置いてきぼりにされることがない、ということが挙げられると思います。

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伊瀬勝良・横田卓馬『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』(KADOKAWA)1巻より

例えば囲碁のルールがわからなくても『ヒカルの碁』は面白いですし、アメフトのルールがわからなくても『アイシールド21』は面白いですよね? 本当に面白い漫画は、その競技のルールをよく知らない読者でも虜にしてしまえるのです。『すべそれ』も、まさにそんな形容が相応しい漫画です。

 

90年代に戻りたいか、と聞かれたら、筆者の答えはNOです。スマートフォンNintendo Switchもない時代になんてもう戻れません。それでも、『すべそれ』で描かれている90年代の世界はとても魅力的に見えます。globeの曲が流行り、教育テレビで『YAT安心!宇宙旅行』を観て、VHSテープに録画していた時代を懐かしく振り返ることができる作品でもあります。

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伊瀬勝良・横田卓馬『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』(KADOKAWA)1巻より

そして何より特筆すべきは、ヒロイン・沢渡 慧美の圧倒的な魅力ではないでしょうか。

ノストラダムスの大予言を心の片隅で少しだけ信じている慧美は、ある時、はじめに向かってこう言ったりします。

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伊瀬勝良・横田卓馬『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』(KADOKAWA)1巻より

「世界が滅びるその時は、私と一緒にいてくれる?」

……優等生キャラで通している慧美ですが、はじめと気が合うだけあって、実はかなり中二病なところがあると思います。だが、それがいい 気取った台詞もこの子なら絵になってしまいます。

 

ところで、『すべそれ』では90年代ではなく現在の慧美が描写されるシーンが少しだけ挿入されます。

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伊瀬勝良・横田卓馬『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』(KADOKAWA)3巻より

2020年現在、慧美とはじめは30代の後半に差し掛かっている頃でしょう。90年代に共に青春を過ごした二人は、その後どんな未来に進んでいくことになるのか。二人の進む道は別れてしまったのでしょうか、それとも…?? 今後も『すべそれ』から目が離せません。